第30回 Steve Czarnecki Trio/when I dream of you 〜助手席の恋人にキスしたくなるピアノトリオ〜 
タワーで何か良いピアノトリオがないかと探していると、オススメのコーナーにこれがありました。ジャケットがイカしています。エリオット・アーウィットの湖畔のドライブをしている若い恋人同士がキスをしているシーンがバックミラーに映っている、有名な写真。
いいですね。ロマンチックです。
湖畔、ドライブ、夕焼け、キス。
女の子はちょっとした美人です。
危なくないんでしょうかね、キスしながら車を走らせて。
危なくないわけ、ないですよね。
日本の法律にはドライブ中にキスしちゃだめっていうような項目はありません。でもシートベルト着用を守ったら、助手席の恋人とキスはできません。シートベルト着用は隣にどんなに素敵な恋人がいても、どんなに夕日が綺麗でロマンチックな場面に出くわしても、キスを禁止しているのと同じなのです。
そういえばこの間、運転免許の書き換えに鮫洲に行ったら、将来、後部座席に乗っている人もシートベルトをしなきゃいけなくなるということ。
ということは、車の中ではみんな座席にへばりついてないと罰金を取られるような仕組みになってしまうわけですね。
だからアーウィットの写真は古き良き時代の名残のような写真になるわけです。
「お父さんの時代は、ドライブ中に助手席の恋人とキスできたんだぞ。」
「へー、危なくないの?」って、子供は答えます。
「恋はちょっと危ないのがいいんだよ。」
なんてね。
実はこのアルバム全体がそんな感じです。
華やかなピアノトリオです。
のっけから高いキーでメロディが始まります。
指が良く動いて、良くスイングするピアニストです。
今回彼の名前を聞くのは初でした。
ベースだってがっしりして、タイコはハイハットがきっちり2,4を刻んでくれます。
ということは、良くスイングするトリオだってこと。
選曲も良いです。
「Body & Soul」とか「Who can I turn to」とか「When I Dream Of You」とか、夢見るようなメロディが次から次へと出てきます。
オープニングの曲は「J.smith」ってなっているけれど、きっとジミー・スミスでしょう。グルービーなブルースです。部屋で流していたら、ピート・ジョリーとかルー・レヴィとかかなと思うくらい高い音のソロが気持ち良くて気に入りました。
最近のブラッド・メルドーとかにはない陽気さで、多分流行からすると古いタイプで、一切、影のないピアノですが、その分、ロマンチックであります。そういえばオスカー・ピーターソンとかジョー・ブッシュキンとか、スイング派のピアニストはロマンチックで影なんか一切なかったのに、最近はああいったピアノがいないなあと思っていた矢先なので、嬉しい盤でした。
きっとこんな人が青山のbody & soulでやってくれたら、毎晩楽しいのになあと思うようなテクニックです。メルドーとか、やけに音楽していて、隣の女の子を口説くような気になりません。
エンターテイメントと純文学ってあるなあと思うわけです。
お楽しみの音楽とやけに音楽する音楽。
どちらが好きかは別の話として、もっともらしく音楽ばかりになったら不味いなあ。危なくてふしだらで楽しい面も持っていくなくちゃ。
きっとこの盤は、若い恋人がドライブ中にキスができなくなったように、時代遅れのサウンドなのでしょう。
でも、こういうのがいいんです。
車の中で鳴らしてみると、どうして隣の恋人にキスしちゃいけないんだって思うようになりますよ。
羽島 亨
P.S.
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テーマ:JAZZ - ジャンル:音楽
- 2008/05/07(水) 13:43:23|
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スタン・ゲッツ/withローリンド・アルメイダ
男前を音にすると、これになる。
イパネマで大儲けしたクリード・テイラーが調子に乗って放った一枚。
私はこれを車のCDラックに入れていつも聞いています。ラックには全部で6枚入っていて、どれもその時の気分を現した作品ばかり。気分が変わるとCDも変わり、いつも同じものが6枚ではないですが、最近のお気に入りはこのwithアルメイダです。
車を走らせて青山辺りに差し掛かる頃にこれがかかると、ちょっと映画でも観ているような気分になるからです。
どんな映画って、フランス物のゴダールですかね。
ジャン・ポール・ベルモンドとか、男前が出てきて颯爽とモンマルトル辺りを駆け抜けるような映画を思い浮かばせます。出てくる女の子は絶世の美女っていうのではなくて、小悪魔可愛いのジーン・セバーグってところですかね。
どうも私はフランス映画に目がなくって、自分がちょっとしたジゴロだったり、ギャングだったり、チンピラだったり、そうした気分にひたりながら街を車で流すのが好きなわけです。
みなさんはそんなこと、ないですか?
一時、煙草をジタンに変えて街を流していたこともあるんですけれど、ちょっと味が合わなくてすぐラークに切り替えました。
ま、自分があまり道を踏み外さない人生を歩んできているので、不良に憧れるんでしょうね。
ゲッツのボサノバはいいです。
音楽の男前っていうのはこれだという決定版でしょう。
私はゲッツのアルバムを聞いて、いつも男前のゲッツがサックスを抱えているところを想像するのですが、いつもジャケットを見ると、意外と太めでそれほど男前でないのでがっかりするわけです。
マイルスっていうのは音も男前ならルックスも男前っていう珍しい人で、だからあれだけになったんだと思いますが、ゲッツは音楽のほうが男前かな。
だいたい男は男前に生まれて、女の子を泣かして、気楽に街を流すなんて不良願望があるんではないでしょうか。
恋とワインとちょっと背徳的な楽しみ。
アルメイダのギターも男前です。チャチャチャーチャと低弦を含んだコードがリズミカルに鳴り響くと、もうブラジルなわけです。
ちなみに、ジルベルトのギターはもっと複雑に感じます。単に男前っていうよりも、もっと複雑な響きがします。アルメイダの方が明快なサウンドをもっているのでしょうね。
3曲目の「WINTER MOON」のイントロを聴いてください。
男前度が高いです。このギターのイントロに誘われるように出てくるゲッツのトーンも男前。いやあ、男は男前に生まれたいものです。
ゲッツはあまりにボサノバで売れてしまったので、後年、ボサノバをリクエストする客がいると、「またボサノバかい」といって相手にしなかったと誰かが書いてあるのを見ました。ヒット曲を持つ歌手がいつも自分のヒット曲を歌わなければならないのが芸能の性ですが、ゲッツも結局は後年、自分についたボサノバというイメージを歓迎しなかったところがあるのでしょう。
でも「ボサノバとバラード」なんていうアルバムをハーブ・アルパート・プロデュースで発売してるなんてところなんて、ちゃっかりしていると思いませんか。
音楽はこの時期からどんどん進化していって、めちゃなさけない音楽とか、本音むき出しの音楽とか、男前の音楽だけではないものもどんどん増えていきました。
でもゲッツは何といっても男前。パフーとサックスに息を吹き込む潔さが、彼のかっこよさの源流ではないでしょうか。
この後、アストラッドとのライブ盤とか、ビッグバンドとの競演版とか、ゲッツはいくつものボサノバ関連を録音していますが、ボサノバというリズムとゲッツの哀愁感は相性が良いようで、どれも最高です。
- 2008/05/07(水) 13:42:56|
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マリオ・ビオンディ/I love more LIVE。
男なら余裕かましていいですか。
わたしの友人に、U君というのがいます。多分わたしの友人の中で一番事業に成功した人物でしょう。
彼がわたしのスクールに顔を出したとき、一体どこで売っているのだろうと思われる柔らかそうなカシミアのスーツを着て、何やらミアゲを差し出しました。
「これ、みなさんで」
西麻布で有名な銘菓。
彼が高校時代と一番変わったのは、ゆっくるしゃべるところでしょう。
なるほど、金持ちになると人はゆっくり喋るようになるのかと思ったものです。
それがやけに堂に入っていて、大物感をかもしだすのです。
「僕は、君たちと違うのよね」的な。「急がなくても、時間あるからね」みたいな。
なるほど、男は慌てない、的なイメージですね。大所帯の会社を束ねていると、そんな感じになるのでしょう。1秒でも無駄にしないために早口で話すわたしとは、大違いであります。
イタリアの伊達男、マリオ・ビオンディのアルバムを聞いて最初に思い浮かべたのは、U君のことでした。
最近あまり聞くことが出来なくなった低音の魅力と、余裕たっぷりな歌いっぷりが、U君のイメージとぴったり重なったのです。
「わたし、こういう歌嫌い。余裕ある歌手って、何?」
妻の言い草です。
男としては、余裕ある男の色気を感じてほしいものですが、妻はあくまでも男女同権、男と女が同じ位置にいるという立場をとっているので、余裕が嘘臭くて嫌だそうです。
そういえば、50年代とか60年代、フランク・シナトラは、生涯困惑した顔するのだろうかってほど、余裕かましていましたね。男としては、あんな風に将来なりたいものだと思ってがんばったものです。
ところが80年代になると、等身大で生きようよ的なムーブメントが広がって、男女同権的な運動も加わって、余裕綽々な男像っていうのがどこかに消え去ったものでした。
消滅した感じだった余裕男像ですが、ひさしぶりに復活させたのがU君でした。そんな友人を見てわたしは、半分羨ましかったり、半分はおいおいって感じになったのが本音でしょうか。そこには確実に演技が入っているはずなので、でも演技入れられるのは余裕なわけですから、微妙な気分です。
マリオはバカラックの「close to you」さえも余裕かまして歌います。
「リオデジャネイロ・ブルー」なんか最高です。
バックは4リズムなんてちゃちなこと言いません。
ブラスにストリングスです。
豪華です。
そういえば、最近のわたしが見たライブ、ほとんど4リズムですね。ブラスが入ると「豪華!」って感じがします。ストリングスの入ったライブ、この十年、見たことないかな。
その豪華なバンドを従えて余裕たっぷりに歌うもんだから、U君に感じた違和感と、ちょっとした憧れも感じました。
マリオ・ビオンディを聞くなら、歌声だけでなく豪華なバックも楽しんでください。背景にある男の余裕を感じてみてください。そこに憧れるか嘘くさく感じるかは、あなた次第。
ただ、そこらの歌手を聞くより、面白いですよ。
わたしは是非、来日したら聞きにいきたいと思ってます。
- 2008/05/07(水) 13:42:38|
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第29回 (マルチン・ボシレフスキ・トリオ) Marcin Wasilewski Trio/January 〜真珠男登場〜 
マルチン・ボシレフスキ・トリオのECMの第2弾が出ました。
ECMは地雷を踏むみたいにときどき理解不能なアルバムが出るのでこのところ買うのを押さえていたのですが、マヌ・カッチェの「Playground」以来ボシレフスキの名前があると買わずにはいられない自分を発見し、ちょっとしたブームであるのです。
アルバムに針を落としてみると、(CDなので通電すると、でしょうかね)出てきたのはボシレフスキのあの見事に研ぎ澄まされたピアノ音。
1曲目、「The First Touch」。
アルバムタイトルのJanuaryとあいまって、何となく雪景色が浮かぶのはわたしだけでしょうか。ベースがズーンとくるタイミングでピアノがカーンときて、雪景色の中をゆったりと歩いている女性の姿が浮かびます。
細身で首がすらりとした美形の女性。誰でしょうね。昔の日活映画に出てくるような感じの、すこし疲れたような美女ですかね。
わたしはこの幽玄の世界がずっと続くように願っていたのですが、1曲目はあっけなく終わり。ああ、残念。良い曲は永久に続いてほしいのに。
2曲目はピーコックの曲です。
ミディアムテンポのピアノを知り尽くしたメロディ。
ベースが5小節目からズーンとはいるともう、再度、幽玄の世界です。
パーカッシブなベースがブーンと低い音を叩きます。
コードが並行して動く曲なので、上や下にひっぱられるような感じがします。この辺がピーコック作品の麗しいところですね。ベースが弾んでいます。寒い国の寒い季節。その中にある青い情熱、ってところでしょうか。
わたしはエバンスが大好きですが、エバンス以上にクールです。やはり寒い国で生まれたメンバーは、違います。
3曲目はフリーテンポのイントロの後、ドラムがマレットでプレイをはじめ、ちょっとそれまでの曲と曲調が違うなあと思っていたら、なにやら懐かしいメロディが浮かんできました。
ニューシネマ・パラダイスのテーマソング、モリコーネ作品です。
三年ほど前、先輩の編曲家のお宅でパーティをしたとき、その方がこのサントラを掛けてくれたとき、あまりのメロディの美しさにみんなの前で泣いてしまったことを思い出しました。サントラはメロディを脚色しないでそのまま演奏していたのですが、このトリオのニューシネはもっともったいぶっている感じです。
4曲目はこれまた珍しいプリンスの「Diamonds And Pearls」。
ちいさなテーマをどんどんリハーモナイズして聴かせる妙が素晴らしくて、16ビートに乗りながらつむぎ出すメロディに透明感を感じます。ウッドベースが16を刻むのは難しいものですが、美しい。
アドリブに入るとボシレフスキの独壇場。この人、ピアノの高いところを使うのが上手いなあ。フレーズを弾いた後のフォローのフレーズが綺麗な分散和音なのだけれど、音色の美しさに魅せられてずっと聞き入ってしまいます。
ここでわたしははたを考えました。
今年の新年会にギターの増崎さんと一緒したのですが、その時彼は、「ギターの音を真珠が落ちてゆくように弾きたい」と語っていたのが印象的でした。わたしはピアノを弾きますが、イメージにあるのは三十年ほど前、NYでビル・エバンスを聞いたときのこと。かなり大きなサウンドでしたが、まるで真珠の粒がジャズクラブで舞っているように感じて驚いたものです。あれ以来、ピアノ弾きとしては真珠が舞うように弾きたいと思っているのですが、なかなかそうは行きません。打鍵の強さが5本全部そろっていることと、タイミングが正確でないとあの「真珠感」が出てこない。真珠感はピアノ弾きの夢だとばかり思っていたら、ギタリストもそういったので、かなり驚いたのです。
この真珠感、演奏できるピアニストは限られています。
高い鍵盤を叩かなければならないので、マッコイ・タイナーとかは残念ながら外れます。キースはかなりぴったりの真珠感ピアニスト。スイング派ですが、アート・テイタムなんかも真珠派ですね。なくなったピーターソン氏は、ある時期、真珠派でした。後半でしょうか。それまでのピアニストはもっと肉感的な中音を多用した人が多かったせいで、真珠派はすくないように思えます。
そう考えていくと、マルチン・ボシレフスキはかなりの真珠派ではないでしょうか。
アルバム全体から高いコロコロする音が転がります。
転がりながら、とてもクールな哀愁が漂います。
マルチン・ボシレフスキバンザイです。
羽島 亨
P.S.
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楽天で今日購入 → トリオP.P.S.
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- 2008/03/03(月) 14:11:29|
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