スタン・ゲッツ/withローリンド・アルメイダ
男前を音にすると、これになる。
イパネマで大儲けしたクリード・テイラーが調子に乗って放った一枚。
私はこれを車のCDラックに入れていつも聞いています。ラックには全部で6枚入っていて、どれもその時の気分を現した作品ばかり。気分が変わるとCDも変わり、いつも同じものが6枚ではないですが、最近のお気に入りはこのwithアルメイダです。
車を走らせて青山辺りに差し掛かる頃にこれがかかると、ちょっと映画でも観ているような気分になるからです。
どんな映画って、フランス物のゴダールですかね。
ジャン・ポール・ベルモンドとか、男前が出てきて颯爽とモンマルトル辺りを駆け抜けるような映画を思い浮かばせます。出てくる女の子は絶世の美女っていうのではなくて、小悪魔可愛いのジーン・セバーグってところですかね。
どうも私はフランス映画に目がなくって、自分がちょっとしたジゴロだったり、ギャングだったり、チンピラだったり、そうした気分にひたりながら街を車で流すのが好きなわけです。
みなさんはそんなこと、ないですか?
一時、煙草をジタンに変えて街を流していたこともあるんですけれど、ちょっと味が合わなくてすぐラークに切り替えました。
ま、自分があまり道を踏み外さない人生を歩んできているので、不良に憧れるんでしょうね。
ゲッツのボサノバはいいです。
音楽の男前っていうのはこれだという決定版でしょう。
私はゲッツのアルバムを聞いて、いつも男前のゲッツがサックスを抱えているところを想像するのですが、いつもジャケットを見ると、意外と太めでそれほど男前でないのでがっかりするわけです。
マイルスっていうのは音も男前ならルックスも男前っていう珍しい人で、だからあれだけになったんだと思いますが、ゲッツは音楽のほうが男前かな。
だいたい男は男前に生まれて、女の子を泣かして、気楽に街を流すなんて不良願望があるんではないでしょうか。
恋とワインとちょっと背徳的な楽しみ。
アルメイダのギターも男前です。チャチャチャーチャと低弦を含んだコードがリズミカルに鳴り響くと、もうブラジルなわけです。
ちなみに、ジルベルトのギターはもっと複雑に感じます。単に男前っていうよりも、もっと複雑な響きがします。アルメイダの方が明快なサウンドをもっているのでしょうね。
3曲目の「WINTER MOON」のイントロを聴いてください。
男前度が高いです。このギターのイントロに誘われるように出てくるゲッツのトーンも男前。いやあ、男は男前に生まれたいものです。
ゲッツはあまりにボサノバで売れてしまったので、後年、ボサノバをリクエストする客がいると、「またボサノバかい」といって相手にしなかったと誰かが書いてあるのを見ました。ヒット曲を持つ歌手がいつも自分のヒット曲を歌わなければならないのが芸能の性ですが、ゲッツも結局は後年、自分についたボサノバというイメージを歓迎しなかったところがあるのでしょう。
でも「ボサノバとバラード」なんていうアルバムをハーブ・アルパート・プロデュースで発売してるなんてところなんて、ちゃっかりしていると思いませんか。
音楽はこの時期からどんどん進化していって、めちゃなさけない音楽とか、本音むき出しの音楽とか、男前の音楽だけではないものもどんどん増えていきました。
でもゲッツは何といっても男前。パフーとサックスに息を吹き込む潔さが、彼のかっこよさの源流ではないでしょうか。
この後、アストラッドとのライブ盤とか、ビッグバンドとの競演版とか、ゲッツはいくつものボサノバ関連を録音していますが、ボサノバというリズムとゲッツの哀愁感は相性が良いようで、どれも最高です。
- 2008/05/07(水) 13:42:56|
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第28回 ネイバーフッド(NEIGHBOURHOOD) / マヌ・カッチェ(Manu Katche) 〜なーんだ、ラーメンだったのか〜
年末のべストアルバムとしてカッチェの「PLAYGROUND」を選んだので、
カッチェのECMの1枚目を手に入れました。
メンバーを見ると豪華です。
トマス・スタンコ(tp)とヤン・ガルバレク(sax)、それに「PLAYGROUND」で大活躍していたマルチン・ボシレフスキ(p)とスワボミル・クルキエヴィッツ(b)が加わります。
編成はまったく「PLAYGROUND」と同様で、フロントがスタンコとガルバレクなわけです。
1曲目、「ノベンバー99」からこのトリオ、快調です。
ベースのスワボミルがまるでロックのファンクのベースみたいなフレーズをすこしレイドバックしたグルーブで聞かせてくれます。
あれ、これ、ジャズだっけ?
ジャズにしちゃやけに均一なグルーブ。
ジャズといえばどんどん展開することが信条なので、ワンコーラス目に使ったフレーズは意地でも繰り返して弾かないもの、何て思ってたので、同じグルーブをずっと弾いているマルチンがものすごく印象的でした。キースのところのディジョネットもピーコックも同じフレーズを繰り返すなんてこと、全然しないものね。
2曲目の「ナンバー・ワン」
これもベースのリフの繰り返しです。
ここでガルバレクが参加します。
このベースリフもどちらかといえばロック的なフレーズで、それに耽美なマルチンが加わります。
マルチンのピアノは全然パーカーとかパウエルのフレーズがひとつも出てこないことに驚かされます。
先日、ピアノの練習本を買いました。
パーカーとかパウエルの代表的なフレーズを50点くらい抜き出して、それを10のキーで演奏するような練習本です。
つまりジャズという音楽はこのふたりの天才が考え出したフレーズを基本として発展してきたので、いかにこうしたお宝フレーズを曲の中で披露するかが美学なわけです。あまりこのふたりからかけ離れたフレーズを弾くミュージシャンはゲテ者扱いされるし、ネタを知りつつ自分のワールドを持って演奏するミュージシャンは天才扱いされる。元ネタを知っていることが大事な、歌舞伎とか長唄に近いジャンルなわけです。
ところがカッチェのグループ、全然そんなフレーズを出してこない。
出してこないからきっとウイントン・マルサリスとかは「ブルースがない」って言うだろうけれど、聞いて楽しむわたしとしては、ブルースがなくたってもOKだもんね。
3曲目、「ララバイ」はとても綺麗な曲です。
やっと出てきたECM的なバラードだと思っていたらちょっと違いました。スタンコがエロいソロをはじめてからバンドの風情がちょいとファンクに変わり、ああそうなのだ、このスワボミルのベースはファンクが土台にあるのだと気がつきました。付点の八分音符を続けざまに叩きつける姿はこれぞ東欧ファンク。
そうしている間のカッチェのドラミングはファンキーで、バスドラとスネアで組み立てているグルーブはジャズ的ではありません。
なるほど、この作品は僕が2007年最優秀レコード大賞に選出した「PLAYGROUND」と同一コンセプトで制作されているというわけでした。
違うのはフロントマンのスタンコとガルバレクで、どちらかというと、こっちのほうがエロいです。
「PLAYGROUND」を聞いて「イカシテる」と思った人には絶対のオススメです。
このアルバムを聞いていると、わたしははじめて香港に行って有名中華料理店にラーメンというものがないと知ったときのことを、なぜか思い出しました。
隣に座った香港の通訳兼レコード会社支社長は、わたしを諭すような目で静かにこういいました。
「ラーメンは日本人が考えた食べ物で、中国にも香港にもありませんよ」
「ホーオ」
わたしは目を白黒させながら、折角来たのだから本場のラーメンを食ってみたいという二週間ほど前からの夢を完全にうちくだかれ、耳の後ろで音が聞こえたような気がしたものです。
でもラーメンは日本人の考えた食べ物であるということを知って、すこし誇らしい気持ちになったのでした。
あんな美味いものを、日本人が考えたのかぁ!
もちろん中国に昔からあった汁蕎麦を日本風にアレンジしたものがラーメンですが、中国の汁蕎麦はコースの中に組み込まれた最後の食べ物という位置づけ、ラーメンは単品で勝負できる素晴らしい位置を手にしていると思うわけです。
まったく同じものは中国にはないのですが、その源流はもちろん中華にあり、それが日本に移って花を咲かせる。いいじゃないですか。
カッチェの音楽も源流はジャズでありながら、まったく違った感じでヨーロッパに咲いた花。
カッチェの音楽のもっているのはファンク、かな。そして自由。
そしてエロさでしょうかね。
なーんだ、音楽の要素全部を持っていたわけですね。
羽島 亨
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- 2008/02/12(火) 13:44:31|
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第27回 プレイグラウンド/マヌ・カッチェ(Manu Katche) 〜おまえ、自由にやろうぜ。自分に自分で限界を作るなよ〜
2007年に買ったアルバムの中でベスト1を決める選考会議が2007年12月31日に世田谷の経堂で催され、結局ナンバー1に選出されたのは、マヌ・カッチェの「PLAYGROUND」でした。
なーんて書くと大儀だけれど、わたし個人としてはその年のナンバー1CDは決めておかなければいけないので、毎年年の暮れになるとひとりCDを書斎に持ち込んで大音量で聴いてどれを一番にするか選出するというのが、一年のしめくくりになっています。
ところが今年はまったく悩むことなくマヌ・カッチェに決定。
というより、こんなに自分の気分にぴったりのアルバム、ちょっとないです。
だいたいマッチェを知ったのはスティングのプロジェクトでタイコを叩いているということと、同時くらいにECMでサックスのヤン・ガルバレクのアルバムで叩いているのを聴いて、なーんか気になったのですね。
スティングのときはマルサリスのお兄ちゃんとかピアノのケニー・カークランド、ドラムはオマー・ハキムとかが目立っていて、その影に隠れているという感じがしたけれど、ガルバレクのときはものすごく良かった。
このときのピアノのライナー・ブリューニングハウスがまた抜群だったのだけれど、ECMからCD出してるんでしょうか。一時探したときはなかったので残念です。きっとプロデューサーのマンフレッド・アイヒャーと合わなかったのでしょう。彼の近況なりをご存知の方がいたら教えてください。また、聴いたことがないようでしたら、一聴を勧めます。フレーズがジャズイディオムに捕われていないのが素晴らしいし、とにかくビューティフルです。
話が横にずれました。
カッチェです。
このアルバム、針を落とした1曲目がスゴイ。
Loというタイトルです。最初に聞こえるのはサックスとトランペットのユニゾンでしょう。静謐とはこのこと、というくらい静かなバラードで、心が洗われます。ピアノがいい感じで絡むと思ったら、Marcin Wasilewskiでした。シンプルアコースティックトリオのピアノですね。ガッツから出ていたものを二枚買ったのですが、そのときよりタッチが強くなっているように感じました。
カッチェのアルバムは曲がよい。どう良いかというと、おざなりに枯葉とかall of meとかMistyとか、体系が出来てしまった音楽ではなくて、これから体系を作るようなメロディです。
耳でこれがヴァース、ここがビルト、ここがコーラス、と追ってゆくと、簡単に割り切れてしまうのに、単純なメロディの繰り返しが耳について離れない。結局メロディが秀逸なのです。
2曲目のPieces Of Emotionのピアノのリフを聴いて、感じることがありました。このリフ、ピアノじゃなくて大音量のギターでやったら、ハードロックのリフじゃないか。
カッチェの魅力はその引き出しがジャズだけではなくてロックとかR&Bとかワールドミュージックとかさまざまなところにあって、一概に割り切れない。カッチェのあとにキースのトリオのジャック・ディジョネットを聴くと、ああ、ジャズだよなあと思います。それだけドラムのたたづまいがジャズとは離れていてロックとかR&Bのテイストが強いのです。
三曲目のSong For Herのシンシンするシンバルワーク、どうですか。彼女に対する思いがストレートに伝わってくるじゃありませんか。
4曲目になってやっとリズミカルなSo Groovy。
これはスティングに参加していたころにイメージです。スケールの大きなドラムですが、ザ・バンドとかアメリカンロックのスケールの大きさではなくて、めちゃめちゃ細かい手数ありつつの、音像の広いドラムです。
この人のタイム感覚は抜群で、ビートの中でゆったりと乗っている感じがして、早い曲でも心が落ち着きます。
このアルバム自体ヨーロッパ陣営のジャズであって、アメリカの人は一人も入っていないことに気がつきました。あくまでもヨーロッパのジャズ。フレーズにバド・パウエルとか出てきません。チャーリー・パーカーとか匂いもありません。ふっと頭をよぎるのは冬のモンマルトルあたりの滲んだ風景。パリのシャンゼリゼを疾走する恋人たちの姿。どこか映像がついてまわります。
ジャズだからアメリカとかそういうのではなくて、ヨーロッパ人がジャズをやるとこうなんだよ、なんていってそうなカッチェのアルバムを聴いて、ジャズという枠にまったく捕われていないミュージシャンの姿を見つけました。
自由なんです。
最近わたしは、それらしく振舞うということを考えなくなりました。
50過ぎたんだから、こうしなくちゃ、とか。
年なんだからこうしてはいけない、とか。
自分に自分を規制を加えて、何とか世間体を整えようとあせっていたのかもしれません。
仕事的には遅い独立だったので、なめられないようにしなきゃね、とか、思っていたのかもしれません。
でも、そんなことはばかばかしい。自分らしく生きよう。ジャンルになんか、とらわれる必要なし。そう考えはじめてきたところなので、カッチェのアルバムは効きました。
「おまえ、自由にやろうぜ。自分に自分で限界を作るなよ、なあ、兄弟」ってなもんです。
で、インナーに入っていたカッチェの写真をみると、なるほどアフリカ人とフランスの混血とか書いてあったけれど、そういった風貌です。自由でエロくて、それでいてトレーニングされている。いつの間にか新しい価値観のミュージシャンが世の中で成功をはじめているんだなと思いました。
羽島 亨
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- 2008/01/28(月) 19:40:12|
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第17回−ジャズ動画 テイク・ファイヴ / ザ・デイヴ・ブルーベック・カルテット※再生するには、画面の中央もしくは左下のPlayボダンに軽く触れてください。
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- 2006/10/04(水) 21:46:51|
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