【裏】作曲の王道 ジャズ & ポップス・レビュー

こんな音楽知ってる?あの「作曲の王道」のプロデューサーとアーティストが、(独断と偏見に満ちた)良質な音楽情報を紹介!

ネイバーフッド(NEIGHBOURHOOD)/MANU KATCHE(マヌ・カッチェ)

第28回 ネイバーフッド(NEIGHBOURHOOD) / マヌ・カッチェ(Manu Katche) 〜なーんだ、ラーメンだったのか〜



年末のべストアルバムとしてカッチェの「PLAYGROUND」を選んだので、
カッチェのECMの1枚目を手に入れました。

メンバーを見ると豪華です。
トマス・スタンコ(tp)とヤン・ガルバレク(sax)、それに「PLAYGROUND」で大活躍していたマルチン・ボシレフスキ(p)とスワボミル・クルキエヴィッツ(b)が加わります。
編成はまったく「PLAYGROUND」と同様で、フロントがスタンコとガルバレクなわけです。
1曲目、「ノベンバー99」からこのトリオ、快調です。

ベースのスワボミルがまるでロックのファンクのベースみたいなフレーズをすこしレイドバックしたグルーブで聞かせてくれます。
あれ、これ、ジャズだっけ? 

ジャズにしちゃやけに均一なグルーブ。
ジャズといえばどんどん展開することが信条なので、ワンコーラス目に使ったフレーズは意地でも繰り返して弾かないもの、何て思ってたので、同じグルーブをずっと弾いているマルチンがものすごく印象的でした。キースのところのディジョネットもピーコックも同じフレーズを繰り返すなんてこと、全然しないものね。

2曲目の「ナンバー・ワン」
これもベースのリフの繰り返しです。
ここでガルバレクが参加します。
このベースリフもどちらかといえばロック的なフレーズで、それに耽美なマルチンが加わります。
マルチンのピアノは全然パーカーとかパウエルのフレーズがひとつも出てこないことに驚かされます。

先日、ピアノの練習本を買いました。
パーカーとかパウエルの代表的なフレーズを50点くらい抜き出して、それを10のキーで演奏するような練習本です。
つまりジャズという音楽はこのふたりの天才が考え出したフレーズを基本として発展してきたので、いかにこうしたお宝フレーズを曲の中で披露するかが美学なわけです。あまりこのふたりからかけ離れたフレーズを弾くミュージシャンはゲテ者扱いされるし、ネタを知りつつ自分のワールドを持って演奏するミュージシャンは天才扱いされる。元ネタを知っていることが大事な、歌舞伎とか長唄に近いジャンルなわけです。

ところがカッチェのグループ、全然そんなフレーズを出してこない。
出してこないからきっとウイントン・マルサリスとかは「ブルースがない」って言うだろうけれど、聞いて楽しむわたしとしては、ブルースがなくたってもOKだもんね。

3曲目、「ララバイ」はとても綺麗な曲です。
やっと出てきたECM的なバラードだと思っていたらちょっと違いました。スタンコがエロいソロをはじめてからバンドの風情がちょいとファンクに変わり、ああそうなのだ、このスワボミルのベースはファンクが土台にあるのだと気がつきました。付点の八分音符を続けざまに叩きつける姿はこれぞ東欧ファンク。
そうしている間のカッチェのドラミングはファンキーで、バスドラとスネアで組み立てているグルーブはジャズ的ではありません。

なるほど、この作品は僕が2007年最優秀レコード大賞に選出した「PLAYGROUND」と同一コンセプトで制作されているというわけでした。
違うのはフロントマンのスタンコとガルバレクで、どちらかというと、こっちのほうがエロいです。
「PLAYGROUND」を聞いて「イカシテる」と思った人には絶対のオススメです。

このアルバムを聞いていると、わたしははじめて香港に行って有名中華料理店にラーメンというものがないと知ったときのことを、なぜか思い出しました。
隣に座った香港の通訳兼レコード会社支社長は、わたしを諭すような目で静かにこういいました。
「ラーメンは日本人が考えた食べ物で、中国にも香港にもありませんよ」

「ホーオ」
わたしは目を白黒させながら、折角来たのだから本場のラーメンを食ってみたいという二週間ほど前からの夢を完全にうちくだかれ、耳の後ろで音が聞こえたような気がしたものです。
でもラーメンは日本人の考えた食べ物であるということを知って、すこし誇らしい気持ちになったのでした。
あんな美味いものを、日本人が考えたのかぁ!

もちろん中国に昔からあった汁蕎麦を日本風にアレンジしたものがラーメンですが、中国の汁蕎麦はコースの中に組み込まれた最後の食べ物という位置づけ、ラーメンは単品で勝負できる素晴らしい位置を手にしていると思うわけです。

まったく同じものは中国にはないのですが、その源流はもちろん中華にあり、それが日本に移って花を咲かせる。いいじゃないですか。
カッチェの音楽も源流はジャズでありながら、まったく違った感じでヨーロッパに咲いた花。

カッチェの音楽のもっているのはファンク、かな。そして自由。
そしてエロさでしょうかね。
なーんだ、音楽の要素全部を持っていたわけですね。

羽島 亨

P.S.
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P.P.S.
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テーマ:JAZZ - ジャンル:音楽

  1. 2008/02/12(火) 13:44:31|
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