くっついたり離れたりの繰り返し
リターン・トゥ・フォーエヴァー
フュージョンの大ヒットアルバム「return to forever」を最初に買ったのは、今から30年も前の話。僕が大学生のころ。
とにかく驚くべき大ヒットで、街のどこを歩いていてもタイトル曲の「return to forever」が鳴っていました。
それ以来ジャズ系CDの打ち合わせの場に行くと、必ずといっていいほど「return to forever」を作ろうという話が出てくる。
ま、ジャズ作っている人にとっては、夢の存在なんです。
僕もそのフィーバー時代にまず一枚。
ところが数回聴くと飽きてしまう。
口当たりが良い分だけ、何となくつまらなくなってしまうのですね。
で、当時いっしょにバンドやっていた丹野君に売ってしまいました。
ちょっと見かけのいい女の子と1回デートしてみて、あまり盛り上がらなかったから二度と電話しなかった、みたいな話です。
次に「return to forever」と出くわすのがLp時代からCD時代に変化する時期。僕の30代。
六本木にあったWAVEというCDショップでたまたまCDプレイヤーを3万円だかで買って、その時試聴した音源が「return to forever」。いやはや良い音に聞こえましたね。(イヤホンを耳に直接つっこんだせいで)
街を歩く時、「return to forever」は友となりました。
でも好みは1曲目の「return to forever」ではなくて2曲目の「クリスタル・サイレンス」。
これは耽美です。
アルバム中コリアのエレピ(エレクトリック・ピアノを業界ではこう呼びます)のコーラスのかかり具合が絶妙で、海の中を漂っているように感じたものです。イヤホン、バンザイですね。
ジョー・ファレルのソプラノサックスも綺麗で、いつもこの曲を聴くと夜の海に漂っているような軽いトランスを感じました。
偶然街で会った昔のガールフレンドの意外な魅力を見つけて、また付き合いだしたというところでしょうか。
ところがウォークマン、慣れてくると飽きるんですね。
音がペラペラでカスカス。当時のマスタリングもよくなくて、音源の良さを引き出すことができていなかったのです。
で、いつの間にか2枚目の「return to forever」は中古CD屋さんに。
つい最近、僕はまたどうしてもあの「クリスタル・サイレンス」が聞きたくなって3度目の購入をしました。
もちろんCDです。
あれからかなり時間が経って、CDのマスタリングの技術が高くなっているのは知っていましたが、買ってみてびっくり。
格段に音が良くなっていましたね。
海に漂うチックのエレピが、立体的。
やはりECMは録音が良い。
疲れた僕の心を癒してくれるというか、違った世界を僕に見せてくれるというか、コリアのエレピとファレルのソプラノだけという編成がこれまた憎いですね。流行じゃなくて趣向ですね。宝物を見つけた感じ。
「クリスタル・サイレンス」もう放せません。
先日、コリアがBLUE NOTE東京に出ていたので見に行きました。
ものすごいエンターテイナーでした。
見かけはただのデブのエロ親父だったんだけど、まずピアノのフレーズがいい。
こうくるだろうなと思うようなアドリブ、絶対しないですね。
ジャズには定番フレーズみたいなものがあって、それのつなぎ合わせの妙で聞かせてしまう類のミュージシャンが多いなかで、ひとつひとつのフレーズが考え抜かれていて、ものすごくファンになりました。
フラメンコダンサーも綺麗だったし、モレイラの存在も楽しかった。
モレイラって気難しいアーティストでどこかスティーブ・ガットとダブるイメージを持っていたのですが、陽気なブラジル人でした。
時代を作った派手な存在のアルバムの中に見つけた一輪の花、「クリスタル・サイレンス」。
この後もずっといっしょにいられる存在になると思います。
羽島 亨
P.S.
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