![]() | ザ・ジニアス・オブ・バド・パウエル+2 バド・パウエル (2006/06/21) ユニバーサルクラシック この商品の詳細を見る |
アメリカのコミュニティーカレッジに
通っていた時にぼくはいくつかの音楽のクラスを取っていたんだ。
そんなクラスがひとつ終ったときにぼくに話かけてきた男の子がいた。
髪はチリチリパーマのロングでキャプテンクックみたい。
でも、顔は東洋人。鼻がちょっと上を向いていた。
西洋と東洋の合作に失敗したような顔だった。
後から聞いたら小さい頃にペプシかなんかの
コマーシャルにスケートを滑る少年役で出てたらしいから、
日本人から見るとちょいブサイクだったけど、
アメリカ人には神秘的で魅力のある顔だったのかもしれない。
ずっと後になって知ったことだけど
実際、女性遍歴すごかったし・・・。
とにかく、お母さんが日本人。
でも自分は日本語しゃべれなくて日本語のクラスを取っているから、
勉強を手伝って欲しいとのことだった。
で、ジャズは好きかってぼくに聞いてきた。
興味はあるけど詳しくないって答えた。
だったら、家にくればジャズのCDやレコードがあって、
すごい高級なオーディオセットで聞かせてあげるよと彼は言った。
まあ、そんなこんなで、実際行ってみたんだけど、
確かに高級なオーディオセットだった。
日本の一般家庭じゃありえない大きさの
畳みたいな形をしたパネル型のでかいスピーカーがふたつ
どーんと家のリビングに置かれていた。
そしてでっかいアンプとレコードプレーヤーなんかも持ってた。
何百万円もするんだって言ってた。
楽器は何弾くんだって聞いてきたから、
ピアノだって言ったら、
じゃこれ聞きなよとバド・パウエルの
「ザ・ジニアス・オブ・バド・パウエル」を掛けてくれた。
絶句・・・。
ジャズなんてその頃はまだあんまり聞いてなかったから、
驚いたね。やっぱり。
いや、音がいいとかじゃなくて、すんげー速いんだよテンポが!
「ティー・フォー・トゥー」の速さははんぱじゃない。
こりゃ、やばいでしょう、完全なスピード違反。
こんなに速いテンポで即興できる人間が
この世にいるということにその時初めて気づいた。
しかも、ただ速いだけじゃなくてちゃんとメロディーが聞こえる。
人間技じゃない。
その日からぼくのジャズピアニストのヒーローはバド・パウエルと決まった。
そんなぼくのスーパーヒーロなんだけど、
悲劇のヒーローなんだよ。
ある日どういうわけか警官に頭を強く殴られちゃって、
彼はほぼ再起不能の傷を負っちゃうんだ。
それでも、なんとかある程度回復するんだけど、
フランスに移住するんだよ。
その頃のレコーディングもある。
聞くととても痛々しい。。。
もう以前の輝きが全部消えちゃってるの。
また、絶句。
あんまり悲しすぎるから、その頃のバドはあんまり聞かないようにしてます。
ところで、マイルズ・デイヴィスが自伝の中で言ってたけど、
バドはクラシック音楽に造詣が深くて、
バッハがどうのとかデビュッシーがどうのとか話ができるのは
ジャズが流行ってた当時バド・パウエルぐらいなだけだったらしい。
だからってわけじゃないだろうけど、
「バド・オン・バッハ 」というオリジナル曲を彼は書いてる。
日本語に訳すと「バッハを弾く俺」みたいな感じ。
あるいは「スイングするバッハ」みたいな感じかな。
まあ、バロックの時代のクラシック音楽は即興が流行っていたから、
ジャズとの親和性はものすごく高いということもあるんだろうけどさ。
ところで日本では「クレオパトラの夢」が流行って
バド・パウエルがちょっと有名にになったみたいだけど、
あんなスローな曲よりチャーリー・パーカーを
追い越そうとして情熱的に演奏する彼が好きです。
多くのピアニストが彼の影響を受けていて、
第10回で紹介したチック・コリアも
彼の影響を受けたピアニストのひとりだよね。
バド・パウエルがジニアス(天才)なのはまちがいないよ。
あ、それから、「ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1」
の「ウン・ポコ・ローコ」もぜひ聞いてみて。
本当にアメイジングだから。
このころのバドを聞くと、
ああ、俺のスーパーヒーローよ
永遠に輝きつづけてくれって気持ちになるんだ。
金田広志
P.S.
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P.P.S.
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