ワーナーミュージックからまたまた素晴らしいアルバムが再発された。
クラレンス・ホイーラー&ジ・エンフォーサーズ/ドゥーイン・ホワット・ウィー・ワナ。
クラレンスという響きに昔聞いた感があって、どこで聞いたんだろうとずっと考えていて、季刊ジャズ批評の別冊「コテコテ・デラックス」に彼らのアルバムが3つ載っていたのを思いだした。
ご存知ない方には紹介しますが、「コテコテ・デラックス」は原田和典さんが監修された名著です。CDの推薦本はこうあるべきっていうくらい、マニアックで独自の美意識に貫かれているからです。
この本にはソウル色とかR&B色の強いジャズミュージシャンの作品を紹介する目的で書かれていて、普通だったら絶対出てくるはずのマイルスとかエバンスとか出てこない。わたしが知っている人だとコールマン・ホーキンスとかジョージ・ベンソンあたりなのですが、彼らの扱いは巻末でちょろっと紹介されている程度です。
なんといっても巻頭扱いがジャック・マグダフとジーン・アモンズというのですから、その黒さ一点に集約された編集方針に驚愕が走ります。
そうです。「黒さ」だけでこの本は編集されているので、いかに黒いか、いかに粘っこいかが評価の基準になったおそるべき本、それが季刊ジャズ批評の別冊「コテコテ・デラックス」なのです。
で、わたしはこの本を発売当初から座右の銘にしておりまして、ここからすこしづつアルバムを集めていたのですが、何せ黒さにこだわった作品群なので、手に入らないレアものばかり。CDショップにいっても、「誰?それ」ってなもんです。
そのコテコテの中で、原田さんが「この本でいろいろなアーティストを紹介しているが、スリー・ソウルズと、このエンフォーサーズあたりが格になっているような気がする」とお書きになっていたことを思い出しました。そのクラレンスが再発になった。早速タワーに走りました。
実際手にとってみると、ジャケットが格好良い。
黒い男たちがスキッとした黒いスーツに身を包み、ビートルズの顔アップジャケットよろしく顔だけアップになっている。サックスでリーダーのクラレンスの顔がいい。にきび面で、目がつりあがっていて、その上、髭が濃い。男の色気満載です。背景も黒。わかってますね。
タイトルが「Doin’ What We Wanna」
「男はブリブリいわせてナンボだぜ」って感じでしょうか。
どんなサウンドなんだろう。コテコテ推薦のエンフォーサーズって。
わたしの頭の中に、エビぞって悲鳴をあげるサックスの音が聞こえます。
あの感じ、好きだなあ。まったくのアホみたいで、体がしびれる。
1曲目、「ヘイ・ジュード」。
ライナーにはクラブ系のコンピによく使われた作品と書いてあったけれど、何がいいって、最初のオルガンが奏でるベースライン。もう、真っ黒です。それにタンバリンが加わります。その後、ヴァースのメロが入ってきてオルガンがアドリブ。いい感じの音色です。
ちなみに、オルガンの音に、うるさいです。
ジャズのオルガンはAIとか杏子のようにかすれてなきゃダメ。BSTとかプロデュースしたアル・クーパーみたいにコーコーいってるのじゃなくて、ジミー・スミスのバラードを弾くときのヒーヒーいってるオルガンが理想です。そこにいくとこのオルガン奏者であるソニー・バーグはわかってます。もうファンです。
ソニーが延々とアドリブをやるのかと思っていたらすぐにブリッジのメロに戻りコーラスに行きました。「こうやったら客は盛り上がるぜ」と全部知っている的な語り口。こんなにかっこいいオルガンいたんだ。その後にディレイを効かせたソニー・コヴィントンのtpが入ってきて、最後に御大クラレンスが登場。入り口はカンサス風の脅かしフレーズ。
やってくれました。ホンカーはこうじゃないと。ジーン・アモンズとかが得意なブレイクを利用しての暑苦しいフレーズですね。これは燃える。
でもですね、フレーズは暑苦しいんだけど(これはわたしの褒め言葉です)このクラレンスには自分の感情をコントロールする大人感(おとなかん、と読みます。おとなっぽい雰囲気とでもいいましょうか)がある。
他のホンカーなんか(エビぞってサックスを吹いてるサックス吹き、見たことないですか。日本でいうと、元ブルーコメッツの井上忠夫さんとか凄かったけれど)プワーっと吹いてあとはフレーズにならないで金切り声を上げ続けるというのが通常なんだけれど、きちんとしたフレーズになっている。頭脳派なんでしょうね。
最後にコーラスに戻って、tpのプワって音で終わり。これが格好いい。
最初はジャケとかたたづまいとかはコテコテなんだけど、音のほうはコテコテというよりはかなりクールだよなとちょっと不満でした。でも何度か聞いてゆくうちに、よくなってきた。まずバンドが全員美味くていい味出していることと、曲のもっていきかたいい。テーマを吹いた後、アドリブの回しというだけのアレンジじゃなくて、あっちへいったりこっちへ来たり。観客を楽しませるための工夫に優れていると考え直しました。実際、日に二度も三度も聞いてわたしがいます。
このバンド、感情とかノリとかだけで表現するのではなくて、曲全体の構成力が相当あったグループと評価できます。
わたしはここで、ハタと膝を打つわけですね。
男は、これじゃなきゃいけない。
自分が勝手に盛り上がっているだけじゃ周辺を引き込むことができない。
誰でも熱くなるフォーマットを利用しながら、あくまでも計算しながら観客を引き込むことを一番に考えるのがいい、とこのアルバムが教えてくれました。
ちなみに、エンフォーサーズは2枚目も出ています。
わたしの好きなエリック・ゲイルが参加していました。
出来としては「男だったらブリブリ」の方が上かな。
スリー・ソウルズは残念ながらまだ再発されていません。
早急の機会に再発よろしくお願いします。
羽島 亨
P.S.
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P.P.S.
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