【裏】作曲の王道 ジャズ & ポップス・レビュー

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(マルチン・ボシレフスキ・トリオ) Marcin Wasilewski Trio/January 〜

第29回 (マルチン・ボシレフスキ・トリオ) Marcin Wasilewski Trio/January 〜真珠男登場〜



マルチン・ボシレフスキ・トリオのECMの第2弾が出ました。

ECMは地雷を踏むみたいにときどき理解不能なアルバムが出るのでこのところ買うのを押さえていたのですが、マヌ・カッチェの「Playground」以来ボシレフスキの名前があると買わずにはいられない自分を発見し、ちょっとしたブームであるのです。

アルバムに針を落としてみると、(CDなので通電すると、でしょうかね)出てきたのはボシレフスキのあの見事に研ぎ澄まされたピアノ音。
1曲目、「The First Touch」。
アルバムタイトルのJanuaryとあいまって、何となく雪景色が浮かぶのはわたしだけでしょうか。ベースがズーンとくるタイミングでピアノがカーンときて、雪景色の中をゆったりと歩いている女性の姿が浮かびます。

細身で首がすらりとした美形の女性。誰でしょうね。昔の日活映画に出てくるような感じの、すこし疲れたような美女ですかね。
わたしはこの幽玄の世界がずっと続くように願っていたのですが、1曲目はあっけなく終わり。ああ、残念。良い曲は永久に続いてほしいのに。

2曲目はピーコックの曲です。
ミディアムテンポのピアノを知り尽くしたメロディ。
ベースが5小節目からズーンとはいるともう、再度、幽玄の世界です。
パーカッシブなベースがブーンと低い音を叩きます。
コードが並行して動く曲なので、上や下にひっぱられるような感じがします。この辺がピーコック作品の麗しいところですね。ベースが弾んでいます。寒い国の寒い季節。その中にある青い情熱、ってところでしょうか。
わたしはエバンスが大好きですが、エバンス以上にクールです。やはり寒い国で生まれたメンバーは、違います。

3曲目はフリーテンポのイントロの後、ドラムがマレットでプレイをはじめ、ちょっとそれまでの曲と曲調が違うなあと思っていたら、なにやら懐かしいメロディが浮かんできました。
ニューシネマ・パラダイスのテーマソング、モリコーネ作品です。
三年ほど前、先輩の編曲家のお宅でパーティをしたとき、その方がこのサントラを掛けてくれたとき、あまりのメロディの美しさにみんなの前で泣いてしまったことを思い出しました。サントラはメロディを脚色しないでそのまま演奏していたのですが、このトリオのニューシネはもっともったいぶっている感じです。

4曲目はこれまた珍しいプリンスの「Diamonds And Pearls」。
ちいさなテーマをどんどんリハーモナイズして聴かせる妙が素晴らしくて、16ビートに乗りながらつむぎ出すメロディに透明感を感じます。ウッドベースが16を刻むのは難しいものですが、美しい。
アドリブに入るとボシレフスキの独壇場。この人、ピアノの高いところを使うのが上手いなあ。フレーズを弾いた後のフォローのフレーズが綺麗な分散和音なのだけれど、音色の美しさに魅せられてずっと聞き入ってしまいます。
ここでわたしははたを考えました。

今年の新年会にギターの増崎さんと一緒したのですが、その時彼は、「ギターの音を真珠が落ちてゆくように弾きたい」と語っていたのが印象的でした。わたしはピアノを弾きますが、イメージにあるのは三十年ほど前、NYでビル・エバンスを聞いたときのこと。かなり大きなサウンドでしたが、まるで真珠の粒がジャズクラブで舞っているように感じて驚いたものです。あれ以来、ピアノ弾きとしては真珠が舞うように弾きたいと思っているのですが、なかなかそうは行きません。打鍵の強さが5本全部そろっていることと、タイミングが正確でないとあの「真珠感」が出てこない。真珠感はピアノ弾きの夢だとばかり思っていたら、ギタリストもそういったので、かなり驚いたのです。

この真珠感、演奏できるピアニストは限られています。
高い鍵盤を叩かなければならないので、マッコイ・タイナーとかは残念ながら外れます。キースはかなりぴったりの真珠感ピアニスト。スイング派ですが、アート・テイタムなんかも真珠派ですね。なくなったピーターソン氏は、ある時期、真珠派でした。後半でしょうか。それまでのピアニストはもっと肉感的な中音を多用した人が多かったせいで、真珠派はすくないように思えます。

そう考えていくと、マルチン・ボシレフスキはかなりの真珠派ではないでしょうか。
アルバム全体から高いコロコロする音が転がります。
転がりながら、とてもクールな哀愁が漂います。
マルチン・ボシレフスキバンザイです。

羽島 亨

P.S.
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P.P.S.
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テーマ:JAZZ - ジャンル:音楽

  1. 2008/03/03(月) 14:11:29|
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