
タワーで何か良いピアノトリオがないかと探していると、オススメのコーナーにこれがありました。ジャケットがイカしています。エリオット・アーウィットの湖畔のドライブをしている若い恋人同士がキスをしているシーンがバックミラーに映っている、有名な写真。
いいですね。ロマンチックです。
湖畔、ドライブ、夕焼け、キス。
女の子はちょっとした美人です。
危なくないんでしょうかね、キスしながら車を走らせて。
危なくないわけ、ないですよね。
日本の法律にはドライブ中にキスしちゃだめっていうような項目はありません。でもシートベルト着用を守ったら、助手席の恋人とキスはできません。シートベルト着用は隣にどんなに素敵な恋人がいても、どんなに夕日が綺麗でロマンチックな場面に出くわしても、キスを禁止しているのと同じなのです。
そういえばこの間、運転免許の書き換えに鮫洲に行ったら、将来、後部座席に乗っている人もシートベルトをしなきゃいけなくなるということ。
ということは、車の中ではみんな座席にへばりついてないと罰金を取られるような仕組みになってしまうわけですね。
だからアーウィットの写真は古き良き時代の名残のような写真になるわけです。
「お父さんの時代は、ドライブ中に助手席の恋人とキスできたんだぞ。」
「へー、危なくないの?」って、子供は答えます。
「恋はちょっと危ないのがいいんだよ。」
なんてね。
実はこのアルバム全体がそんな感じです。
華やかなピアノトリオです。
のっけから高いキーでメロディが始まります。
指が良く動いて、良くスイングするピアニストです。
今回彼の名前を聞くのは初でした。
ベースだってがっしりして、タイコはハイハットがきっちり2,4を刻んでくれます。
ということは、良くスイングするトリオだってこと。
選曲も良いです。
「Body & Soul」とか「Who can I turn to」とか「When I Dream Of You」とか、夢見るようなメロディが次から次へと出てきます。
オープニングの曲は「J.smith」ってなっているけれど、きっとジミー・スミスでしょう。グルービーなブルースです。部屋で流していたら、ピート・ジョリーとかルー・レヴィとかかなと思うくらい高い音のソロが気持ち良くて気に入りました。
最近のブラッド・メルドーとかにはない陽気さで、多分流行からすると古いタイプで、一切、影のないピアノですが、その分、ロマンチックであります。そういえばオスカー・ピーターソンとかジョー・ブッシュキンとか、スイング派のピアニストはロマンチックで影なんか一切なかったのに、最近はああいったピアノがいないなあと思っていた矢先なので、嬉しい盤でした。
きっとこんな人が青山のbody & soulでやってくれたら、毎晩楽しいのになあと思うようなテクニックです。メルドーとか、やけに音楽していて、隣の女の子を口説くような気になりません。
エンターテイメントと純文学ってあるなあと思うわけです。
お楽しみの音楽とやけに音楽する音楽。
どちらが好きかは別の話として、もっともらしく音楽ばかりになったら不味いなあ。危なくてふしだらで楽しい面も持っていくなくちゃ。
きっとこの盤は、若い恋人がドライブ中にキスができなくなったように、時代遅れのサウンドなのでしょう。
でも、こういうのがいいんです。
車の中で鳴らしてみると、どうして隣の恋人にキスしちゃいけないんだって思うようになりますよ。
羽島 亨
P.S.
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P.P.S.
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