
I Love You More Live
わたしの友人に、U君というのがいます。多分わたしの友人の中で一番事業に成功した人物でしょう。
彼がわたしのスクールに顔を出したとき、一体どこで売っているのだろうと思われる柔らかそうなカシミアのスーツを着て、何やらミアゲを差し出しました。
「これ、みなさんで」
西麻布で有名な銘菓。
彼が高校時代と一番変わったのは、ゆっくるしゃべるところでしょう。
なるほど、金持ちになると人はゆっくり喋るようになるのかと思ったものです。
それがやけに堂に入っていて、大物感をかもしだすのです。
「僕は、君たちと違うのよね」的な。「急がなくても、時間あるからね」みたいな。
なるほど、男は慌てない、的なイメージですね。大所帯の会社を束ねていると、そんな感じになるのでしょう。1秒でも無駄にしないために早口で話すわたしとは、大違いであります。
イタリアの伊達男、マリオ・ビオンディのアルバムを聞いて最初に思い浮かべたのは、U君のことでした。
最近あまり聞くことが出来なくなった低音の魅力と、余裕たっぷりな歌いっぷりが、U君のイメージとぴったり重なったのです。
「わたし、こういう歌嫌い。余裕ある歌手って、何?」
妻の言い草です。
男としては、余裕ある男の色気を感じてほしいものですが、妻はあくまでも男女同権、男と女が同じ位置にいるという立場をとっているので、余裕が嘘臭くて嫌だそうです。
そういえば、50年代とか60年代、フランク・シナトラは、生涯困惑した顔するのだろうかってほど、余裕かましていましたね。男としては、あんな風に将来なりたいものだと思ってがんばったものです。
ところが80年代になると、等身大で生きようよ的なムーブメントが広がって、男女同権的な運動も加わって、余裕綽々な男像っていうのがどこかに消え去ったものでした。
消滅した感じだった余裕男像ですが、ひさしぶりに復活させたのがU君でした。そんな友人を見てわたしは、半分羨ましかったり、半分はおいおいって感じになったのが本音でしょうか。そこには確実に演技が入っているはずなので、でも演技入れられるのは余裕なわけですから、微妙な気分です。
マリオはバカラックの「close to you」さえも余裕かまして歌います。
「リオデジャネイロ・ブルー」なんか最高です。
バックは4リズムなんてちゃちなこと言いません。
ブラスにストリングスです。
豪華です。
そういえば、最近のわたしが見たライブ、ほとんど4リズムですね。ブラスが入ると「豪華!」って感じがします。ストリングスの入ったライブ、この十年、見たことないかな。
その豪華なバンドを従えて余裕たっぷりに歌うもんだから、U君に感じた違和感と、ちょっとした憧れも感じました。
マリオ・ビオンディを聞くなら、歌声だけでなく豪華なバックも楽しんでください。背景にある男の余裕を感じてみてください。そこに憧れるか嘘くさく感じるかは、あなた次第。
ただ、そこらの歌手を聞くより、面白いですよ。
わたしは是非、来日したら聞きにいきたいと思ってます。
羽島 亨
P.S.
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