映画「死刑台のエレベーター」のテーマ
マイルス・デイビス
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男はトレンチコートである。
ジタンの両切りを遠くを見るようにくゆらすのである。
秋のモンマルトルをゆっくりと歩くのである。
「俺にほれちゃダメだせ。苦労する」もごもご女の耳元でささやくのである。
そして孤独である。自分の決めた道を信じて、誰の賛成も得られずとも、ひとり進むのである。
こうした男道作法を僕に教えてくれたのは、60年代のフランスの俳優・アラン・ドロンだった。当時、アメリカ男の代表がチャールズ・ブロンソンなら、ヨーロッパ型のイイ男はまさしくアラン・ドロン。
で、僕はダーバンのトレンチコートを着込み、原宿シャンゼリゼをジタンをくゆらせながら歩いたのはもう遠い昔。ヘナチョコな青春でした。でもね、男が男に憧れる。いいじゃないですか。
あんな人になりたい。あんな風に生きたい。
そういう思いがファッションを生み、音楽を生み、イイ男を生み、イイ世界を生む。
レコードに針を落とした瞬間、部屋の空気が変わるということって、経験ないですか。僕が最初にそれを知ったのは、このマイルスの「死刑台のエレベーター」でした。
大体マイルス・デイビスがルイ・マルの映画に即興で音楽をつけたというだけで買いだった。サックスはヴァルネ・ヴィラン。ドラムはケニー・クラーク。悪いわけがない。
1曲目はもやのかかったようなマイルスの「あの」トランペットのアカペラからはじまる。暗黒街です。1曲目からアカペラです。
それに追従するようにベースとドラムがシャラーンと伴走してくる。まるで、男の主張に賛同するかのように。もうこれだけで夜の世界が広がってゆきます。
僕はこのフレーズを譜面に起こして、何度もピアノで弾いたことがあるけれど、このメロディはピアノじゃ絶対に表現できない。やはり、暗黒街の憂鬱は、ミュートしたトランペットが一番ということですね。
映画も見てください。ジャンヌ・モローが光っています。実生活ではマイルスと恋仲です。
ルイ・マル監督の白黒の映像がシャープで、これからはじまるサスペンス感を十分演出しています。
この音楽のぐっと来る感じって、何だろう。
きっと殺人した後、唯一の逃げ道のエレベーターが突然故障してそこに閉じ込められてしまうという主人公の孤独感と、孤高の音楽家マイルスという存在と、メロディがもっている孤独感がやけに一体になって、「男ならチンタラ生きるんじゃないぜ。自分の信じる道を歩けよ」と、つきはなされたような感じがするからだと気づきました。つきはなされて、自分が生きる。もう、こうなると禅の世界ですね。そうです、哲学がここにあるのです。
そういえば僕はこのアルバムをガールフレンドと聞いた記憶がない。
男友達とは何度も繰り返し聞いて、「男ってな・・・」という話題に花を咲かせていたけれど、ガールフレンドとはそんな話題をしたこともない。ま、「男というものは」なんてガールフレンドに熱く語る男なんて、最初から信用できないけれど・・・・。
世の中の男諸君。突き通しましょう。自分の好みとか感覚とか生き方を。突き通すことでしか、自分を表現することができないのです。それはとても難しいことだけど、でも、つきとおしましょう。そこでやっと、あなたの世界が見えてくるのです。このCDはそんなことを男達に教えてくれるありがたいCDです。
ああ、ちくしょう。僕もマイルスみたいにつきとおしたい。
羽島 亨
P.S.
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P.P.S.
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