南海の気まぐれ娘に恋をする
![]() | バット・ノット・フォー・ミー アーマッド・ジャマル (2006/06/21) ユニバーサルクラシック この商品の詳細を見る |
自分にぴったりくるピアノに出会ったこと、あります?
僕は14歳でジャズを聞き始めて(最初は渡辺貞夫さんのボサノバだった)から約16年位経ってやっと出あったのがこのアーマッド・ジャマル。
だいたいジャズピアニスト名鑑とか、名盤100とかには大きく扱われない存在がジャマルだったので、買い控えしていたわけですね。
通常ならオスカー・ピーターソンなわけです。エバンスもいます。今ならチック・コリア。ピアノトリオに名盤のないハービ−・ハンコック。ピアノトリオに名盤だらけのキース・ジャレットってなラインナップでしょうか。
アーマッド・ジャマル? 誰?ってなもんです。
勇気を出して買った理由は、マイルスが「枯葉」のイントロをパクったとか、「飾りのついた〜」の演奏方法はかなりジャマルからの引用があるとかという記事を見て、ジャマルというピアニストに興味をもってレコード店に走ったのがきっかけでした。
後でマイルスの自伝とか参考文献とか読むと、ジャマルとやりたくてシカゴまで出向いていたりしたのですが、ジャマルはこの申し出を断っていますね。
シカゴにあるパーシングというラウンジでの仕事が良かったみたいで、時のマイルスの申し出を断った男として有名になりました。
ジャマルは当時レコードの売れるピアニストで、エバンスとかエロール・ガーナーとか別格だったらしく、若造のマイルスとやる必然性もなかったのかもしれません。
ジャマルが他のピアニストと何が違うって?
とても気まぐれなんです。
1曲目の「but not for me」とかでも当然のフレーズを弾かなかったり。メロディですよ。メロディを弾かずにすませてしまうわけです。
メロディを途中で辞めちゃうんです。
仕方ないからべースのイスラエルは一生懸命ランニングするわけです。
時を見て突然引き出したり。
イスラエルは、「フーっ」ってなもんです。
とまあ、いい気なものです。
メロディもかなり高いところで短音で取っていたと思うと急に低いところでゴーンと引き出す。
「突然」が彼のキーワードでしょう。
で、こんな風に弾いてみようと思うと、弾けないんですね。ジャマルの気まぐれさは譜面に書くのがバカらしくなる。
僕なんか当時サラリーマンをしていたから、1の次は2で、2の次は3と、チームが理解しやすいような行動を取るのが大人だと理解していたので、こういう演奏はかなり過激に感じましたね。だって他人と調整しないわけだから。
そういった意味で「突然の人」ジャマルの存在は格好よかったです。
弾く時と弾かない時のタイミングの妙がすごくて、聞いてしまうんですね。
一体君たち、打ち合わせあるの?
譜面書いているわけ?
自分の弾くところと弾かないところ、決めてあるの?
という具合に質問が立て続けに出てしまうのですが、きっとジャマルは答えないでしょう。何たってマイルスを断った男ですから。
で、POINSIANAです。
この南海の楽園のような美しいメロディは、「美」ですね。
誰がこんなエキゾなメロディを考えつくでしょう。
南の風と海と髪に赤い花を飾った娘が出てきます。イメージで。
ジャマルのピアノは気まぐれ絶好調で、どんどんリフを作っていって気分をもりあげます。
そうです、ジャマルは曲にリフをつける名人だったのですね。
だからベースとドラムはそのリフに乗って演奏してゆくと、ある地点にたどりつく。
ジャマルの「枯葉」とマイルスの「枯葉」。イントロはおんなじです。
このイントロがジャマル得意のリフになっている。曲全体でここが一番いいです。
キュートですね。
マイルスはきっとジャマルのように吹きたかったンじゃないかと思います。マイルスのちょっと吹いて休む、あの独特のスタイルの原型を僕はジャマルに見ます。ちょっと弾いては休む。休んではちょっと弾く。それがいかにもわがままで気まぐれ。ジャマルの魅力です。
そういえば南海の娘POINSICANAもジャマルが弾くと、気まぐれないたずらっぽい女の子に聞こえて来ませんか?
羽島 亨
P.S.
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