「あんたを思って、泣いた夜もあるのよ」とジュリーは言った
![]() | 彼女の名はジュリーVol.1 ジュリー・ロンドン (2006/06/14) 東芝EMI この商品の詳細を見る |
真の美人歌手ジュリー・ロンドンが彼女のファーストアルバム「JULIE IS HER NAME」を発売したのが1955年。
ちなみに公表されているジュリーの生年月日は1926年9月26日。
つまりこの人の歌手デビューは29歳だった。
もちろんその前に女優としてナポレオン・ソロとかにちょい役では出ていたものの芽が出なくて、俳優でありプロデューサーのジャック・ウエッブと結婚していたから、主婦件女優みたいな肩書きだったのでしょう。
ところがこのアルバムが発売されて、その中から「クライ・ミー・ア・リバー」が発売されるとものすごい人気となり、スターの座に駆け上がっていくわけです。
人生ってわからないですね。
ジャケットを見ると、本当に美人です。
他に発売されているジャケットを見てもスリムだけれど出ているところはきっちり出ていて、その上、挑戦的な瞳が印象的ですね。
もうこういう女の人が傍にいたら、僕なんかたじたじです。
で、その女の人に、「あんたを思って、泣いた夜もあるのよ」と囁かれるわけです。もうだめですね。
「本当? 本当に泣いたの?」
「そう、川みたいに涙がこぼれたわ」
ってのが「クライ・ミー・ア・リバー」の内容ですね。
もう恨みつらみです。
他の女にいわれたら「うるせえなあ」ってところでしょうが、ジュリーに言われると「うるせえなあ」じゃなくて「いいなあ」が先に来る。
僕は最初、このcry me a riverという構文の意味が取れなくて、何ども口の中で繰り返したことがあります。
「あんたがわたしを、川のように泣かせる」です。
それだけ大量の涙が流れたということでしょうが、文学的です。
音楽も「ルート66」のボビー・トゥループがやっているだけあって最高です。
最初の「Now You Say Youre Lonley」の和音は半音ずつ上がっていくのですが、これはクリシェといいまして、同じ和音の中のひとつの音だけ変化させるテクを使っています。
メロディはひとつの音を伸ばしているのにバックが変化して、主人公の心のもやもやを音で感じさせるナイスアレンジです。
伴奏をギターのバーニー・ケッセルとベースのレイ・レザーウッドが担当している。このふたりは西海岸のファースト・コールのジャズマン。本格的ですね。ジュリーは最高のジャズマンのギターとベースのみで歌ったアルバムでデビューを飾ったということになります。
聞いてみてください。洗練されたジャズギターとウッドベースがジュリーのため息まじりの声に絡み付いて、ゆっくりとしたスイングを作っています。
まるで腰をゆっくりゆっくりグラインドさせるようなスイング。
白人の、
美人の、
29歳のちょい役で顔は知られていたけれど名前と顔が一致したことのないような女優が、ゆっくりゆっくり腰をグラインドさせながら、
「あんたを思って、泣いた夜もあるのよ」
と歌うわけです。
男なら爆発です。
ヘロヘロ。
リバティーはすごい。
29歳の新人歌手にここまで賭けたのです。
ジュリーもスゴイ。
29歳で恥ずかしげもなくここまでやったのです。
で、作品は最高。もちろん彼女の最高のアルバムとなりました。
ジュリーは3回結婚しています。
二度目がギタリストのハワード・ロバーツ。
この人はギタースクールをLaで開校して後年大きな成功を射止めました。
その後がルート66のボビー・トゥループ。音楽プロデューサーですね。彼のサックスも素敵です。
ひとくせある男が好きなんでしょうね。
ボビーとは最後まで幸せだったようです。
僕の周辺に「もう年なんですけど、歌手になれますか」と質問してくる女性がたくさんいます。
僕の答えは決まっています。
「あなたが魅力的ならいくつだって、大丈夫」
羽島 亨
P.S.
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