【裏】作曲の王道 ジャズ & ポップス・レビュー

こんな音楽知ってる?あの「作曲の王道」のプロデューサーとアーティストが、(独断と偏見に満ちた)良質な音楽情報を紹介!

ケン・ペプロスキーquartet/MEMORIES OF YOU

第25回 ケン・ペプロスキーquartetMEMORIES OF YOU 〜言いたくないけど、名盤です。〜

メモリーズ・オブ・ユー メモリーズ・オブ・ユー
ケン・ペプロフスキー・カルテット (2006/06/21)
ヴィーナスレコード

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SWING JURNALを読んでいるとあまりにもvenusレコードのアーティストが良い扱いになっているので、「これは出来レースでは?」と思うのは私だけでしょうか。毎回新譜を出すたびにいつも名盤蒐集クラブ入りでは、ちょっとねという感じで、買いひかえてしまう私がいます。

でもやはりvenusレコードは日本のJAZZレコード界の中はでは間違いなくトップを走るレーベルなので、店頭の試聴などの機会には聞いてみたい作品でもあるという複雑な関係です。

いっしょに遊んだらきっと楽しいに決まっている異性ではあるのですが、あまりにも人気がありすぎて積極的には交際を望まない相手、という感じでしょうか。

そんな私は、Venusレコードに、全然はまったことがないというのではないのです。

Venusレコードが出来た当初、こんなJAZZアルバムが日本でも出来るようになったのかと感動したのが、ビル・チャーラップの「ス・ワンダフル」。はじめて聞く名前のピアニストでしたが、ジャケがクラシックな水着を着たアメリカ娘が水上スキーをしている艶やかな姿で、一曲目の「タイム・アフター・タイム」にしびれました。一音一音大事に弾くそのスタイルは、とても新鮮だったです。エディ・ヒギンズの『ベッドで煙草はよくないわ』もよかった。

エディ・ヒギンズ & スコット・ハミルトンが共演したアルバム、「煙が目にしみる」に入っていた「イッツ・ア・ロンサム・オールド・タウン」はとても胸躍る曲で、オリジナルのシナトラバージョンまで購入。なーんだ、ヒギンズ&ハミルトンのほうがいいじゃないかって感じでした。つまり選曲がとてもよいのがvenusレコードの売りだったんですね。

でも、商売うまい友達と酒を飲みたくないように、ちょっと付かず離れずというスタンスでvenusとは付き合っているつもりの私が、どうしてもこれはスゴイとみなさんに紹介したくなるアルバムが登場しました。ケン・ペブロフスキー・カルテットの「メモリーズ・オブ・ユー」

何がいいって、まず1曲目のタイトル曲にもなった「メモリーズ・オブ・ユー」のイントロのピアノです。確信があって弾いているメロディって、どれくらい聞いたことあります? このテッド・ローゼンタールの弾くイントロは、スイング好きの私としては、もう最高。優雅、優美、そんなイメージでしょうか。

高いところでコロコロいうところは私の好きなテディー・ウィルソンに近いのですが、テッド・ローゼンタールのほうがもっと実があります。スイング時代のピアニストは意外と指癖みたいなフレーズが多くて、コピーしていくと、つまんないことが多いです。しかしこのテッドは違う。優美、優雅。メロディが練られている。

イントロの2曲目の「I’ll be seeing you」を聞いてください。このクラリネットのねっとりとした音色とフレージング。ケンのクラリネットが鳴り出した瞬間に失禁しないのは、ジャズファンじゃありません。

いきなりテッドのピアノのイントロからはじまりますが、それにクラがはいってもベースもドラムもはいってこない。ディオなんですね。

で、二度目のAメロからドラムとベースがはいって、わたしのこの曲に対する「愛おしさ」が全開となります。

音楽というのは生体反応以外何者でもなくて、じゃ、どういうときに生体反応が出るかというと、良い音、良いメロ、良いタイミングで、あります。
ケンやテッド・ローゼンタールにはそれがある。それを正しくレコーディングできるvenusレコードがいる。やはり、venusレコードはすごいな、そんな記事になってしまいました。

気になっていた女と、やっぱりデートして、はまってしまったという感じでしょうか。

はっきりさせましょう。ケンの作ったこのアルバムは、名盤であります。

羽島 亨

P.S.
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  1. 2007/08/27(月) 11:00:00|
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クラレンス・ホイーラー&ジ・エンフォーサーズ/ドゥーイン・ホワット・ウィー・ワナ

第24回 クラレンス・ホイーラージ・エンフォーサーズドゥーイン・ホワット・ウィー・ワナ 〜男はブリブリいわせてナンボだぜ〜



ワーナーミュージックからまたまた素晴らしいアルバムが再発された。
クラレンス・ホイーラー&ジ・エンフォーサーズ/ドゥーイン・ホワット・ウィー・ワナ。

クラレンスという響きに昔聞いた感があって、どこで聞いたんだろうとずっと考えていて、季刊ジャズ批評の別冊「コテコテ・デラックス」に彼らのアルバムが3つ載っていたのを思いだした。

ご存知ない方には紹介しますが、「コテコテ・デラックス」は原田和典さんが監修された名著です。CDの推薦本はこうあるべきっていうくらい、マニアックで独自の美意識に貫かれているからです。

この本にはソウル色とかR&B色の強いジャズミュージシャンの作品を紹介する目的で書かれていて、普通だったら絶対出てくるはずのマイルスとかエバンスとか出てこない。わたしが知っている人だとコールマン・ホーキンスとかジョージ・ベンソンあたりなのですが、彼らの扱いは巻末でちょろっと紹介されている程度です。

なんといっても巻頭扱いがジャック・マグダフとジーン・アモンズというのですから、その黒さ一点に集約された編集方針に驚愕が走ります。
そうです。「黒さ」だけでこの本は編集されているので、いかに黒いか、いかに粘っこいかが評価の基準になったおそるべき本、それが季刊ジャズ批評の別冊「コテコテ・デラックス」なのです。

で、わたしはこの本を発売当初から座右の銘にしておりまして、ここからすこしづつアルバムを集めていたのですが、何せ黒さにこだわった作品群なので、手に入らないレアものばかり。CDショップにいっても、「誰?それ」ってなもんです。

そのコテコテの中で、原田さんが「この本でいろいろなアーティストを紹介しているが、スリー・ソウルズと、このエンフォーサーズあたりが格になっているような気がする」とお書きになっていたことを思い出しました。そのクラレンスが再発になった。早速タワーに走りました。

実際手にとってみると、ジャケットが格好良い。

黒い男たちがスキッとした黒いスーツに身を包み、ビートルズの顔アップジャケットよろしく顔だけアップになっている。サックスでリーダーのクラレンスの顔がいい。にきび面で、目がつりあがっていて、その上、髭が濃い。男の色気満載です。背景も黒。わかってますね。
タイトルが「Doin’ What We Wanna」

「男はブリブリいわせてナンボだぜ」って感じでしょうか。

どんなサウンドなんだろう。コテコテ推薦のエンフォーサーズって。
わたしの頭の中に、エビぞって悲鳴をあげるサックスの音が聞こえます。

あの感じ、好きだなあ。まったくのアホみたいで、体がしびれる。

1曲目、「ヘイ・ジュード」。
ライナーにはクラブ系のコンピによく使われた作品と書いてあったけれど、何がいいって、最初のオルガンが奏でるベースライン。もう、真っ黒です。それにタンバリンが加わります。その後、ヴァースのメロが入ってきてオルガンがアドリブ。いい感じの音色です。

ちなみに、オルガンの音に、うるさいです。

ジャズのオルガンはAIとか杏子のようにかすれてなきゃダメ。BSTとかプロデュースしたアル・クーパーみたいにコーコーいってるのじゃなくて、ジミー・スミスのバラードを弾くときのヒーヒーいってるオルガンが理想です。そこにいくとこのオルガン奏者であるソニー・バーグはわかってます。もうファンです。

ソニーが延々とアドリブをやるのかと思っていたらすぐにブリッジのメロに戻りコーラスに行きました。「こうやったら客は盛り上がるぜ」と全部知っている的な語り口。こんなにかっこいいオルガンいたんだ。その後にディレイを効かせたソニー・コヴィントンのtpが入ってきて、最後に御大クラレンスが登場。入り口はカンサス風の脅かしフレーズ。

やってくれました。ホンカーはこうじゃないと。ジーン・アモンズとかが得意なブレイクを利用しての暑苦しいフレーズですね。これは燃える。

でもですね、フレーズは暑苦しいんだけど(これはわたしの褒め言葉です)このクラレンスには自分の感情をコントロールする大人感(おとなかん、と読みます。おとなっぽい雰囲気とでもいいましょうか)がある。

他のホンカーなんか(エビぞってサックスを吹いてるサックス吹き、見たことないですか。日本でいうと、元ブルーコメッツの井上忠夫さんとか凄かったけれど)プワーっと吹いてあとはフレーズにならないで金切り声を上げ続けるというのが通常なんだけれど、きちんとしたフレーズになっている。頭脳派なんでしょうね。

最後にコーラスに戻って、tpのプワって音で終わり。これが格好いい。

最初はジャケとかたたづまいとかはコテコテなんだけど、音のほうはコテコテというよりはかなりクールだよなとちょっと不満でした。でも何度か聞いてゆくうちに、よくなってきた。まずバンドが全員美味くていい味出していることと、曲のもっていきかたいい。テーマを吹いた後、アドリブの回しというだけのアレンジじゃなくて、あっちへいったりこっちへ来たり。観客を楽しませるための工夫に優れていると考え直しました。実際、日に二度も三度も聞いてわたしがいます。

このバンド、感情とかノリとかだけで表現するのではなくて、曲全体の構成力が相当あったグループと評価できます。

わたしはここで、ハタと膝を打つわけですね。

男は、これじゃなきゃいけない。

自分が勝手に盛り上がっているだけじゃ周辺を引き込むことができない。

誰でも熱くなるフォーマットを利用しながら、あくまでも計算しながら観客を引き込むことを一番に考えるのがいい、とこのアルバムが教えてくれました。

ちなみに、エンフォーサーズは2枚目も出ています。
わたしの好きなエリック・ゲイルが参加していました。
出来としては「男だったらブリブリ」の方が上かな。

スリー・ソウルズは残念ながらまだ再発されていません。
早急の機会に再発よろしくお願いします。

羽島 亨

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  1. 2007/05/21(月) 05:22:06|
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エディ・カノ&ヒズ・クインテット/ブロート・バック・ライヴ・フロム・P.J.’S

第23回 エディ・カノ&ヒズ・クインテット/ブロート・バック・ライヴ・フロム・P.J.’S 〜見つけた! ものすごく好みのピアニスト



わたしがはじめてジャズというものを聴いたのは、グレン・ミラーオーケストラの「ムーンライト・セレナーデ」でした。ロマンティックなメロディとコロコロ鳴る珠のようなピアノと、美メロを奏でるクラリネットのソロ。

今でいうイージーリスニングのハシリだったんでしょうね。

その後、実は日本も空前のジャズブームで、渡辺貞夫、日野皓正という二代スターを迎え、ニッポン放送のオールナイトライブなんかをよく見にいったものです。

新宿のピットインで聴いたナベサダさんの「パストラル」、忘れられませんね。「星影のステラ」を吹く日野さんとか、最高にかっこよかったですね。
それからは外人アーティストを追っかけまわして、アルバムを買い倒して、気がついたら40年の月日が経っていました。

でも、そうやって長い間ジャズを聴いていても、まったく知らなかったミュージシャンがいっぱいいます。

今日紹介するピアニストもそのひとり。
エディ・カノです。

カノというくらいなのでメキシコの出身なのでしょう。
ライナーノーツを見ると、メキシコ人の父と、メキシコ系アメリカ人の母の間で生まれたカリフォルニア州ロサンジェルス出身とのこと。

わたしが彼を知ったのは、CDショップのおまけにもらった小冊子に、最近のクラブDJの推薦するジャズがいくつか載っていて、そのいくつかに反応して買った一枚です。

そこに紹介されていたのは、どちらかといえばメインストリームではなくて、ちょっと外れのジャズでした。
カノのアルバムに反応したのは、「ラテンジャズ」という言葉。
そんなジャズ、あるのかよって感じでしょうか。
あるなら一体どんなものか、聴いてみたくなったのです。

ちなみにその小冊子はユニバーサルのCDを買ったおまけについてきて、全部で20タイトルくらい載っていましたが、紹介の仕方がとてもよかったので、わたしはその中の半分くらいを買うことになりました。
書き手はクラブDJの誰かさんでしたが、見識のある人があまりメジャーでないアーティストを紹介するというのは、とてもよいことです。

で、カノです。
LAにあったP.J.’Sというライブハウスの67年のライブ盤で、頭っから飛ばしています。

1曲目の「Slip Slip」という曲なんか、お客さんの方が熱くもりあがっていて、カノのバンドをバックに、「Slip Slip」と掛け声をかけているのが印象的でした。
続く「LA BAMBA」はパーカッションのエディ・タラメンテスが歌いだして大盛り上がり。
「MIRA COMO ES」はサンタナの「オエ・コモ・バ」と似たラテンタッチのノリノリの曲。
とにかくピアノトリオにパーカッションがふたりついて、そのパーカッションがコンガとティンパレスなものだから、カンカンいってご機嫌です。

で、いいところで「マンデー・マンデー」がはじまります。
これは同じレーベルのスターボーカルグループ・ママス&パパスのヒット曲ですが、「ああ、この曲って、こんなに奇抜な流れをもっていたのか」と、感心させられるような出来。とてもよいです。

そしてオススメがカノのオリジナル「DON’T EVER CHANGE」の登場。
アルバムに収録された唯一のバラードですが、同じバラードでもエバンスの耽美とはまったくちがって、ゆるーいリズムをバックに、とてもセクシーです。

このblogの一番最初に紹介したエンリコ・ピエルヌンツィのカンツォーネに似たコードの動きを持つ楽曲で、わたしのラテン好きを一挙に刺激しました。

全体にカノのピアノはオブリガードがすくなくて、とにかくパキパキとリズミカル。音もピーンと立ってます。余計な配慮とかなくて、欲しいときに欲しい音がはいってきて、それ以外はドラムとふたつのパーカッションに身を任せるという姿勢。
これはちょっと勉強になったな。

わたしなんか、あまり知らない人と話す場合、会話と会話の空いたところをつまらない話をして埋めてしまう癖があるんだけど、カノは言いたいことを言った後は、しゃべりたい奴に任せるという姿勢。大物です。

全部聴き終わると怒涛のパーカッションとノリノリだった記憶と、やけにセクシーなバラードが頭をくるくる回って、また聴くかって感じでCDの針を落としてしまいます。

人生ってこうやって生きたいなあ。
ノリノリで楽しいことだけやって、時にセクシー。
面白いことがあると、新しいことでも何でも飛びついて自分のものにしてしまう胃袋の強さ。
クヨクヨしている暇があったら、もっと楽しみなよって感じでしょうか。
今週、僕は15回ほどこのアルバムを聴きました。

その上、カノの別のCDがないかタワーとHMVに買いに走り、結局アマゾンで「DEEP IN A DRUM」を注文したくらい。

あー、楽しみだな、いつ届くのかな。

羽島 亨

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  1. 2007/03/16(金) 10:00:00|
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FOR YOUNG MODERNS IN LOVE / サム・ドナヒュー

第22回 FOR YOUNG MODERNS IN LOVE / サム・ドナヒュー
〜僕としては、デートの時のバックミュージックはこれ〜




サム・ドナヒューの「FOR YOUNG MODERNS IN LOVE」を手に入れた。
評論家の寺島靖国さんが企画した紙ジャケシリーズの一枚だったのだが、CDに針を落とした瞬間、「これはすごいCDだ」と小躍りした。
サム・ドナヒューはハリー・ジェイムスのところでテナー・サックスを吹いていた色男という印象だったけれど、音楽的に強い印象はなし。
ダンスだかステップだかというアルバムをタワーで見たことがあるけれど、ペパーミントグリーンのバックに金髪のすいたらしいテナーマンが写っていた。
50年代のバンドマンはルックスが勝負だったんですね。

1曲目の「LOVE LOCKED OUT」にやられる。
フワーっとステレオの前で音が広がってゆく。
その広がりが何だか最初、わからなかった。
聴いてゆくうちに気づいたのは4本のトロンボーン。4本のトロンボーンがフワーッと中低音でハーモニーをとっている。
「ぺっ」とかダメです。
特にトロンボーンを使うとき、高い音で「ぺっ」やりたがるアレンジャーとかいるけれど、現実を見せられた気がして、あれはダメ。
あくまでもスイートに、フワーじゃなくちゃダメです。
それをバックにサムが中低音でメロディをさりげなく吹く。サンボーンみたいに高い音でしゃくりません。パーカーみたいに狂ったように早弾きとかしない。あくまでも八分音符をレガートで吹いてゆく。くつろぎのサウンドですね。

ああ、毎日の緊張がほぐれてゆくって感じ。
ステレオが置いてある僕のちいさな部屋が50年代のニューヨークを見下ろす夜景の見えるレストランに変わっている。
ああ、こんなバンドをバックにデートしてみたかった。
マリリン・モンローみたいにちっっちゃくってグラマーでスイートな女の子を連れてカクテルでも飲みたかった。
彼女は僕がプレゼントしたちいさな箱からエステーローダーの口紅を取り出して、「うれしいわ、どうしてわかったの? これ、わたしがとってもほしかった色だわ」と顔を輝かせる。「これ、高かったでしょう?」
バックにはサムの「LOVE LOCKED OUT」。
周辺にはスーツとパーティードレスの恋人たち。いやが上にも気分が盛り上がる。
「高かったよ。でもいいのさ、会うたびにちょっとづつ返してね」
そして軽いキス。
なーんてね。

とてもスイートな曲が続きます。
「恋のチャンスを」「LOVE ME OR LEAVE ME」「ラブ・ネスト」
50年くらいに流行ったヒット曲はどれもよく出来ていて、とにかく心が癒されます。

そういえば昔、僕が大学のビッグバンドでトロンボーンを吹いていた頃、1stトロンボーンの先輩の家に遊びにいったとき聴かされたアルバムのことを思い出しました。
バックにストリングスオーケストラを従えて、フワーっと高い音で吹いていたのは、一体誰だったんだろう。どの曲もどの曲もフワーっとしていて、甘酸っぱい青春の匂いがしました。

最近のレコード会社が再発するアルバムはエバンスのモントルーだったりキャノンボールのライブだったり定番まくっていて面白くない。まとまった数が売れるようなものしか企画できないのがレコード会社の宿命と知りながら、次から次へと復刻されるアルバムは「歴史的名盤」「ジャズという芸術の金字塔」的な立派なものばかりで、当時流行ったラブソングをフワーと吹くトロンボーン奏者のアルバムなんて、目にはいらないのでしょう。

でもそうした歴史的名盤とか演奏技術の粋を集めたとかいうアルバムはきびしくてつまらない。一生懸命仕事をしている部下にもっと仕事をしろと叱咤激励する上司に似ていて、もうここまで頑張っているんだからいい加減ゆるしてよ。一日に二時間しか寝てないですよ、僕。なんて感じかな。

J-POPも同様の傾向です。
みんな頑張れという。
元気にという。
たまにはゆったりしろとか、仕事するなとか言ってほしいですね。
一生懸命愛するんじゃなくて、肩の力を抜いて愛してみようとか言えばいいのに。

そこにいくとサム・ドナヒューのアルバムは力が抜けていていいです。
歴史的な存在になろうとしていないところがいい。
素敵な音が鳴って、それが空中に消えてゆく。
はかなくて、粋、です。
力まない。
天才的なアドリブとかしない。
テンションもあんまり使わない。
ただただスイングしてハモル。
寺島さんに感謝。だって彼がいなかったら一生再発しなかったアルバムでしょう、これ。

今日は雨なので、仕事の後にタワーに寄って、買い損ねていたサムのペパーミントグリーンのアルバム、買って帰ろうっと。

羽島 亨

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  1. 2007/01/24(水) 09:00:00|
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カウント・ベイシー / カンザス・シティ・セヴン

第21回 カウント・ベイシー / カンザス・シティ・セヴン
スイングは強力。でも「省エネ」なジャズピアニスト。〜




新年明けてから最初に何を聴くかと思ってCD棚をガサゴソをひっかきまわす。
最初は寝ている妻を起こさぬようにとちょっと遠慮しながらだったけれど、エバンスもいいけれどピーターソンもなぁとか、ゲッツも渋いけどスティットだっていいからなぁとか、あぁだのこうだの考えると、2007年を明けるためのCD選びは難航しました。

約15分ほど考えて、結論。
ベイシーとカンザスシティ7にしよう。

「カンサスシティ」じゃなくて「カンザスシティ」です。
ジャズの殿堂カンザスシティという発音は、昔々笈田 敏夫さんがライブでしていた発音そのまま。何かヤバくてジャズな感じがする発音ですね。

どうしてこのアルバムに決めたのかというと、いろいろ理由があります。
まずは、ベイシーの中でもビッグバンドではなくて、リトルコンボ作品であること。パーソネルがサド・ジョーンズにフランク・ウエスにフォスターにフレディ・グリーンにエド・ジョーンズにソニ・ペインと錚々たるダル顔ぶれであること。アレンジがご機嫌で、特にウエスとフォスターのフルートが新鮮に響くこと。その上、ベイシーのピアノがご機嫌であるからです。

とにかく聴いたことがない人は一聴してみてください。
ビッグバンドのベイシーとは一線を隔した魅力があるアルバムです。ジャムセッション風なんだけど、アレンジされていて。ベイシーの愛奏歌が多く納められているんだけれど、当日ベイシーの脳裏に浮かんだメロディをアドリブ風に演奏していたりもしていて。
自由と計画。ふたつの要素があって、ジャズという芸術が生んだ宝石のひとつです。

わたしはベイシーのピアノに内心、憧れがあります。
どうして?
答えは明快、省エネだからです。
省エネだけどやけにスイングする。

ピアニストといえばオスカー・ピーターソンです。
ビル・エバンスです。
キース・ジャレットです。
その方々はもちろん最高に上手いピアノです。
ホロビッツとかグールド級に上手いです。
ジャズのピアニストが下手でクラシックのピアニストが上手いなんて思っているのは相当頭が古いです。
今挙げた人達はどれをとってもF1級のピアノの上手さを誇ってます。
k-1級といってもいい。
とにかく毎日よっぽど練習していないと、形にならないテクニックを要求されているということです。
じゃ、ベイシーはと尋ねられると、黙ってしまいます。
じゃ、どうなのよと質問されると、でもいいんだよねと答えるのはわたしだけでしょうか。

本人はプレイボーイ誌のインタビューで下手さをカバーするために編み出した奏法だと話していました。自分でもあんまりピアノが上手くないことは承知なのでしょう。
後々パブロ盤ではピーターソンと一緒にやったりしていますが、そういうときのベイシーはいつも以上に寡黙になってます。気の毒なくらい。

でもですね、ビッグバンドを演奏しているときのベイシーの小エネピアノは、音数がすくないんだけれど物凄くバンドをスイングさせるエネルギーに満ちていて、気がついたらベイシーのアドリブフレーズを口ずさんでいる自分を発見したりするわけです。

つまり、聴く人に勇気をくれるわけです。

じゃ、ベイシーの何がわたしをそんなにひきつけるのか。
ベイシーのピアノには、いい気なもんだよなあって感じがいつもあるのです。
そんな気楽にピアノ弾いて、いい気なもんだよ、ベイシーさんって感じ。

ベイシーのオーケストラは大抵がピアノトリオからはじまっていきなりガーンと全部のホーンセクションが鳴るみたいな編曲が多いのです。ベイシーのソロ部分はいい気なもんで、突然全員がはいると途端に熱血になってゆく。
人生、がんばろうって感じでしょうか。

で、サド・ジョーンズとか超絶技巧の抜群のソロしたあと、フランク・ウエスとかがピョロピョロいい感じのソロをした後、再度登場するわけです。
おまえら、何やってんだよ。人生なんか、そー思った通りになんかいかないんだから、がんばるなよ。楽しめ。ってなもんです。

フレーズとフレーズの間に30秒くらい明けるのなんか平気ですからね、ベイシーは。
これがバド・パウエルだったら32分音符を1000個くらい詰め込めるスペースを、まったくのゼロにしてしまうということなんか、平気なんです。危険だよなあ。危険な親父。

楽器やった人ならわかるはずなんだけど、ベースがズンときてドラムがチーチャカいってスイングがはじまったら、普通の神経の人ならガンガン弾きたくなります。出来ればピーターソンみたいに華麗に。もしくはエバンスみたいに耽美に。キースみたいに唸っちゃったりして。

それが人情ってもんです。
で、一緒にプレイしているバンドメンバーに、「やるじゃん、おまえ」とか言われたり、ちょっと気になる女の子に、「羽島さんって、意外とピアノマンだったりして」とか言われて、「そうでもないけどさあ」ってな感じをどうしても狙ってしまいたくなるもんです。凡人としては。

でもベイシーはそんなものを一切狙っていませんでした。

彼が狙ったのは、下手は下手なりの存在感。
バンドリーダーとしての位置づけによる、美味しい登場。
みんながスイングしているのにひとりだけ涼しい顔の旦那芸だったんですね。

懐かしい友達といっしょに酒を飲むとき、「おまえ、何飲む?」
「何でもいいよ。お前なに?」
「どうしようね。焼酎?」
「いいねえ」
何て場面、居酒屋で死ぬほど見た風景だし、日本人なら絶対してしまう全体主義というか、調整主義。自分だけ飛び出すことを恐れるわけです。
わたしはそんな場では他人のことなど一切気にしないで「僕はワイン」という人が好き。
飲むときくらい好きにさせろよ、バカヤロウってな感じでしょう。
飲むときくらい好きにしても、誰も怒りゃしないって。
でもそんなときでも調整してしまうわたしがいます。
いまいましい。
自分の中にサラリーマンをやめて8年になるのに、みんなの思惑の中で目立たないように生きようという自分がいるのが嫌です。嫌われたくないのです。日本人ですね。

だから、2007年の初頭に、わたしはベイシーを聴くのです。
妻に、「起こしちゃってごめん、ちょっとさ、CD探してたもんで」なんて弁解がましい態度をとらない自分を見つけるために。

羽島 亨

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